2020年11月27日
悲しき強者 コールドスチール・S.R.K


COLD STEEL S.R.K 1990年代終わりの製品

CARBON Ⅴ MADE IN USA
20年以上も前、当時のキレモノ業界はそれまでの米国ブランドである GERBER や BUCK に対して話題性で日本市場に食い込みつつあった Spyderco や COLD STEEL といったこれまた米国勢がブイブイとエンジンをふかし出した頃だった。


この SRK(Survival Rescue Knife)は同社のトレイルマスター、リコンスカウトに次ぐV-STEEL三兄弟、更に下には マスターハンターがいたので四兄弟の三男坊として、長男ほどモンスターではなく、次男ほどマッチョでもなく、四男ほど器用でもない、どちらかと言えば中途半端な目立たない存在でした(これアタシの感想)。でも、まだ若かりし頃のアタシはそれを選んだのです。しかし、ソロキャンプと街道歩きに没頭し、今の様な焚き火ブームもなかった時代、アタシには SRK は話題性こそあれ本当のところ無用の長物でした。


“叩き”(バトンやチョッピング)の跡は働いた証

“叩き”によって剥がれたパウダーコーティング。しばらくはカッティングエッジと同様に銀色の地肌を晒していたが、ある時ふと思い立ってバーチウッドのガンブルーでブルーイングした。もちろん、錆は一つも出ていない。
それから10数年、世の中は変わり海外の動画サイトでは無骨なサバイバルナイフ(この言い方好きじゃない!)で立ち木をチョッピングするシーンばかり、肉厚のブレードをその重さで叩きつける荒技法師ばかりが目についた頃でした。チョッピングの次に来たのがバトニングです。そんな時代にあっても海外の様にそこいらの朽木をチョッピングしてバトンするなんてアタシの暮らす環境ではそれこそ目的のないこと。何度か仕事で庭木の処理を頼まれ可燃物として捨てられる大きさにするのに使っただけでその後お蔵入り状態でしたのさ。

“Kraton®製のハンドルに Pachmayr®タイプのチェッカリングが施された”と1998年のカタログには記載させている。Pachmayr® は実銃用のラバーグリップなどを製造する米国の有名メーカーである。当時はCOLDSTEEL のラバーハンドルはPachmayr®製と聞かされた覚えがあるがハンドルにはメーカー刻印無し。

*MORA 860M これを手にした時の衝撃は今も忘れない。安い!軽い!素晴らしくよーく切れる!

*ENZO 95
MORA のナイフに無かった強度的な安心が加わったキレモノ。
そして時代は米国流荒技サバイバルから北欧系のブッシュクラフトに移行し動画サイトもまたそれに追随した。

*ESEE 4SS、IZULA 2、IZULA SS
更に世の中は移り変わりいつの間にやらキャンプブームとなって、テレビをつければお洒落キャンパーが MORA や OPINEL を使う様になった頃、北欧系のキレモノに夢中だったアタシは再び米国のサバイバルブレードに原点回帰しとりました。


さて、S.R.K の得意とするチョッピング、そんなことするより良く切れるノコを持った方が遥かに少ない労力で作業できる、御もっとも!細い枝を打つ時もギアプルーナーでカットした方が簡単、そりゃそうだ!バトンするならアックス使え、正論!くるくるフェザー作るなら北欧系かコンベックスの方が美しく楽にできる、あたり前田のクラッカー!と言うわけで、、、『帯に短し襷に長し』的な SRK はこのままお蔵入り衆となったままなのか。このキレモノの特徴である分厚くタフなブレードを何に使うか、、。

アタシが買った当時の S.R.K は COLD STEEL オリジナルの Carbon Ⅴ(炭素鋼)で分厚いブレードは真っ黒のコーティング(“epoxy powder coat”と記載あり)でエッジはよく磨かれた鈍角なロールド(コンベックス)でした。しかもこの厚みで剃刀の様な切れ味でした。

機械や万力を使ってグイッと曲げても折れないと言われていたCOLDSTEELのCarbon V®(鋼材)、当時のカタログには、、
「優れた特性を実現するために配合され、徹底的に処理された、独自の炭素合金鋼です。Carbon V° は、冶金試験と性能試験の両方を使用して開発および改良されました。ブレードは、実用試験として「Cold Steel® Challenge」にかけられ、その後、切断されて微細構造を検査できるようになりました。このようにして、最適な鋼と、鋼の最高の特性を引き出す最適な熱処理シーケンスに到達しました。当社は、精錬段階で少量の元素合金が加えられた高品質の高炭素刃物鋼を大量に購入しています。これらの元素は、刃の刃持ちと弾力性を向上させます。
次に、鋼は当社の厳密な仕様に合わせて圧延され、最適な結晶粒度を実現し、ブレードは鋼の結晶粒方向を最大限に活用するために打ち抜かれます。
ブランクは溶融塩で加熱され、高品質のオイルで焼き入れされ、制御されたオーブンで焼き入れされます。その後、研磨されます。
新しいブレードはその後、厳密に制御されたオーステナイト化温度、正確に定義された浸漬時間、適切な焼入れ媒体の選択、および注意深く監視された焼戻し時間と温度を含む、専門的な熱処理を受けます。この熱処理シーケンスにより、最も高価なカスタム鍛造品の特性を再現し、多くの場合それを超えるブレードが生まれます。」
(当時のカタログに記載された内容をGoogle翻訳にかけてそのまま載せました。)

分厚く頑強に縫製されたベルトループ。実銃用のナイロンホルスター並みの張りとコシ。

今や木材を削らせれば北欧系のブレードシェイプかSRKより鋭角なコンベックスグラインドの方がスイスイといくし、

バトンさせればノンコーティングでフラットなブレードの方が割りやすい。残るは、やはりチョッピングか、、。ムムム、、、せぇ〜へんなぁ、、チョッピング。

うーむ、、思い当たらん!細かな作業にはデカすぎる、ヘビーな作業は専門分化されたヘビーな道具がある。調理にはまるで向かないし、サバイバルなんて考える暇があるなら今日の晩飯を考える。日常的に使う EDCブレードにはデカすぎて編入も無理。やはりコレは専門分化されたヘビーなキレモノ(アックスなど)がない時にチョッピングでその代わりを果たすしか無いのかね。せめて弟分のマスターハンターくらい器用なら。嗚呼、悲しき三男坊よ、、気を落とすな!夜明けは近いぞ!(ホンマかいな、、)
2020/12/11
ちょっとだけ気合入れて研ぎ直しました。購入当初のロールドエッジが甦ったような気もします。
