2017年06月19日
ビクトリノックス・アウトライダー


以前から何度もブログにアップしてきた一本のナイフ。赤いハンドルと美しい INOX の肌。マスプロでありながら個体差が極めて少ない高品質なツールナイフ。
仕事でも日常でもキャンプやデイハイクでも使われてきた《お気に入り》の一本、ビクトリノックス・アウトライダーNL。今回あらためてアップします。
【 アウトライダー 】
VICTORINOX 0.90 23 アウトライダーNL は
ロック付きのブレードを持つラージサイズの
スイス製ツールナイフです。これをスイスアーミーナイフと呼ぶかどうかは別として、赤いハンドル、INOX(ステンレス製)ブレード、各種ツール、それらは正にスイスアーミーナイフだね。
『スイスアーミーナイフはアルミハンドル!』という方、『いや、今はナイロンハンドルのラージブレード!』という方、スンマセン。大目にみてちょーらい。


*右が20年近く使ってるアドベンチャーNL、左が
今回の主役アウトライダーNL
ビクトリノックスがロック付きのラージブレードを発売したのはいつのことだったか。それが発売された頃、私はそれらを販売する側だった。私も発売後すぐにそれを買った。アドベンチャーNLというシンプルなモデルだったが人気があったのはラックサックNLというノコギリ付きのモデルだった。私はその後アドベンチャーNLをもう一本買った。よほど気に入っていたのだろう。それらは一本が行方知れずとなり、残る一本は台所で包丁の代わりに使われてきた。今は台所の棚に CASE のナイフと一緒に置かれて食品などの封を切るのに使われている。

アウトライダーNL はラックサックNL にハサミとフルオープンする細く長いフィリップスドライバー(+)が加えられたモデルである。この細く長い(+)ドライバーは人によって小さい(先端が)と感じるかもしれない。確かにこのドライバーはその形状から奥まった小さなネジを外す為のものの様だ。また固く締まったネジや径の大きなネジを外すのはネジ穴をナメたりドライバーにかなりの負荷が掛かるのでやめた方が良い。


缶切りと栓抜きは共に今の時代あまり使われない道具となってしまったがこれにも使い道がある。
どちらもその先端部のドライバー面(マイナス)を使って
箱などに貼られたクラフトテープ(粘着テープ)をカットできる。切るならナイフが、、、いえいえナイフはあきまへんで〜。これは前にも書きましたが粘着テープの糊はブレードに着くとなかなか取れません。せっかくのツルピカブレードに糊がへばり着いて切れ味も落ち抵抗となります。

ZIPPOライターのオイルがあればひと塗りで落とせます。またはZIPPOライターがあればタンク部分を抜いて底のウイックで拭いてやるときれいになります。ただこれはライターやオイルを持っている場合の話。だから出来るだけブレードには糊を着けない様にスルメイカ。

缶切りや栓抜き、裏面のリーマーでクラフトテープをカットする場合はこの様に指先を添えて先端部を軽く突き刺し手前に引けば簡単です。この時指を添えるのは深く刺して中の荷物を傷つけないようにする為です。

缶切りと栓抜きはステープラーの針を抜くのにも使える。青果などの分厚いダンボールを留めている太い針なら栓抜きがよく、文具のステープラーなら缶切りの先端がよいよい。ファイアースチールをこの缶切りで擦ると火花飛ぶ飛ぶ!そんな使い方もあるのさ。

ハサミはそのまんまハサミ。切れ味はとても良くガタつくことも可動部が外れることもない。板バネは畳んだ状態でもへたることなく、万が一折れた場合でもパーツとして販売されている。交換は道具(ポンチと叩くもの)とバネの芯を抜く時に置く台(私はもっぱらプライヤーの口の部分)があれば比較的簡単にできます。このハサミは糸や布、紙、リード線などを切ることができます。



*1970年代後半から80年代前半に放映されたイギリスのテレビシリーズで人気を博した《プロフェッショナルズ・特捜班 CI5》。その中で爆発物と思われる小包の封をスイスアーミーナイフのハサミでカットするシーンがありました。主人公のひとり(ボーディ)が赤いハンドルのスイスアーミーナイフを取り出しサッとハサミを取り出す(これが実に手慣れた感じ!)、もうひとり(ドイル)がそれを受け取り封をカットするといったシーン。
思わず『オォー』となりましたね〜。懐かしや〜〜。

ソーブレードは長さもあって使いやすそうだが木質によってはかなり引っかかりを感じるかもしれない。結果としてはちゃんとカット出来るが意外と労力がいる。特に太い枝などは途中でかなりの抵抗を感じるが、上から押さえつける感じで力を加えて押し引きすると良いようだ。クラフト用の柔らかな木材には使わない方が良い。切り口がボロボロになる。また合板もかなり苦労するだろう。このソーブレードは生木や落ち枝などを切るのに向いている。

リーマーはこうしてグリグリ穴を開けるのに使う。これで穴を開けておき木ネジなどを差し込みドライバーでねじ込む。木ネジはタップが切ってあるからそのままでもねじ込めるがナイフ本体に無理な力をかけない様に出来るなら穴は開けておいた方がいい。
*ずっと以前京都宇治の山奥でテントなしの野営をした際にケモノ侵入を防ぐためにハンモックを使って防御柵を設置したことがある。その時、ハンモックの一端をこのスイスアーミーナイフのリーマーを起こして突き刺し固定したことがある。蚊取り線香も立てられるぜよ。

トゥイザーズと呼ばれるピンセットは主にとげ抜きに使ってる。毛抜きとしても使える。私はこれを結構使います。爪楊枝も有れば便利だな〜て感じる。

アウトライダーのメインは何と言ってもこのブレードだろう。美しいラインのブレードは十分な長さを持ち欧州のナイフに見られる薄くしなる様な頼りなさはどこにもない。ピカピカにポリッシュされたINOXのブレードは水をよく弾きサビにも滅法強い。

ワンハンドモデル(片手でブレードを開ける)を除くスイスアーミーナイフはこの切れ長の溝に爪を引っ掛けてブレードを開く。他のツールも同じ。よく人差し指の爪を引っ掛けて恐々起こす人がいるが出来れば親指の爪が良い。一番力が入るし強いから。

親指の爪を引っ掛けブレードを起こしたら《キック》と呼ばれるブレードの付け根の部分を親指の先で前方に軽く押し込むとパチンとブレードが開く。そのまま押すとカッティングエッジで指の先を切りそうだけど ハンドルより先に指を出さないようにすれば怪我の心配はない。私は20年以上このやり方でブレードを開いているが一度も切ったことはないアル。

切れ味は抜群だが特別硬度は高くないので一日使ったら軽くタッチアップ(刃立て)しておこう。タッチアップはセラミックのシャープナーでも陶器の底でも良い。自分はもっぱらスパイタルコのセラミックシャープナーだ。この美しいブレードは食材から木材まで広い用途に対応しスライド式のロックも確実で安心だ。ただ、これを何かに突き立てるとか、刺してこじるなどシースナイフと勘違いした様な使い方はやめた方が良い。これは普通に考えればわかることだろう。バトニング?そんなアホな〜でも、やってみましたよ。(やったんかい!)
正直、気持ち悪かった〜。ロックが外れそうで外れない、、。やめましょね。

アウトライダーに限らずスイスアーミーナイフは高い品質管理で製造された世界的なツールナイフである。各ツールはその一つ一つが頑丈で高精度、工夫次第、アイデア次第で幾通りもの使い方ができる。しかし、これは単品独立した専用工具ではないことを覚えておこう。各ツールは頑強でも、これはいくつものパーツを組み合わせた複合品なのだ。全ての可動パーツは固くも緩くもなく丁度よく組み立て調整されてある。それらに専用工具のような負荷をかけたら、、例えば増し締めされたネジを無理に回そうとしたり、バールの代わりに固く閉じた物をこじ開けようとしたり、、それは正に無茶な使い方、誤った使い方なのである。これらスイスアーミーナイフにはそれに見合ったスケールがあるのだ。万が一にも専門職が使う道具と同じような使い方をしてはならないのであーる。

とにかく使い易い一本です。ビクトリノックスもウェンガーも若い頃から殆どブランクなく使い続けてきたけれど、いつどのモデルを手にしても同じ感覚で使える。慣れる必要などない。手にした瞬間から使い慣れた道具として普通に使えるのだから。

硬いものもスパッと、

柔らかなものはスィーと、

ハサミも使い様、
ponioでした。
またのお越しをお待ちしております。
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