ナイフに無理をさせる

ponio

2016年07月15日 18:29

こんにちは、ponioです。

しばらく《キレモノ》ネタばかり続きましたが、それも今回で一旦終了。『一旦』なのでまたお伝えする事が出来たらやります。今回のお題は《ナイフに無理をさせる》です。


この写真はiphone 5(今だこれ)で撮ったものです。わかりますか?ナイフのブレードです。エッジ(実際に切れる部分)がキラキラしてるでしょ。これ簡単にいうと刃こぼれ、欠けたと言えるレベルではないですが、明らかにエッジが潰れています。光に当てると角度によってこの様に光って見えます。こうなった原因は《バトニング》にあります。


これじゃあ、さぞかし切れないことだろうと思いきや、これがバリバリサクサクと切れるのですよ。切れ味、切れ具合をみるのによくやるペーパーカッティングをしてみてもシャシャーと切れます。しかし、ほんのわずか角度を変えるとパチッと紙に引っかかる、、でもそれでもシャーと切れる。


これ新品のうちはそれはそれはお美しいブレードでありました。ゼロ・スガンディグラインドと呼ばれる刃付けの仕方で造られた北欧のナイフです。


掘削工具のようなバリッとしたエッジが利いたシンプルだけどゾクッとするようなライン。これの主な目的はキャンプなどでの焚き付け作りと加工。それに適した北欧的な刃付けを施されたナイフです。


鋼材は《N690 Co》というオーストリアのステンレス鋼。他にもO1と呼ばれる炭素鋼やD-2と呼ばれるセミステンレス鋼、北欧系のナイフによく使われるステンレス鋼などがブレードバージョンとしてありましたが、自分はこれを選びました。やはり、雨や食材の水分などナイフは水気に晒されることが多いから手入れが楽チンでその辺あまり気にならない物が良かったのです。


この三本のナイフはいずれも一枚物のブレード鋼材を左右2枚のハンドル材で挟んだ構造、いわゆる《フルタング》で造られています。フルタングはハンドル材に差し込まれてネジやカシメなどで固定された物に比べれば頑丈です。ただ、写真中央のナイフは前のブログで紹介しましたがバトニングでハンドルを割ってしまったQueenのナイフです。これはブレードそのものは非常にタフで裸眼で見る限りは刃こぼれも潰れも曲がりもしたことがなかったのですが、天然素材であるハンドル材が見事に割れてしまいました。(ボンドで補修すみ)一番上のスカンディグラインドのナイフはその下のQueen や ESEEのナイフよりブレードの厚みもあっていかにも頑強そうでしたが、硬く太いクスノキの落ち枝をバトニングした際にエッジが最初の写真のようになってしまいました。それでも、シャリシャリと木を削りシャーシャーと薄いペーパーを切っておりました。つまり使える範囲の刃こぼれであったわけです。


中央と下の二本はブレードにもエッジにも変化なく(裸眼で見る限りは)、勿論、顕微鏡などで見たら細かなエッジはボロボロでしょうが、、見た目には何にも変わりません。ペーパーカッティングするとわずかに引っかかったり、紙に食い込まない部分があったりと、やはりバトニング前とは少し切れ味も違っています。そこで、耐水ペーパーでシャラシャラと軽く研いで、革砥の替わりに使ってるスウェーデン軍のレザーショルダーのストラップでシュコシュコ擦ればハイ!元通り。

ペーパーカッティングはあくまでエッジの欠けや潰れを感触で見つけるための試し切りで、これがスムースに出来るナイフが万能で完璧なナイフかといえばそうに非ず。
カッターの様な本当に鋭利で薄いエッジは、ただ切れるだけで刃そのものに耐久性がないのです。だからペーパーカッティングはエッジのわずかな欠けや潰れを発見するための試し切りなのです。

さて、今回お題にしました《ナイフに無理をさせる》はバトニングやチョッピングなどの作業を指します。これには向き不向きが有るのです。その様な作業をやるよりは、やらない方がナイフには良いのです。それらの作業は斧、アックス、鉈に任せれば良いのです。つまり専門分化です。目的にあった道具を使う。これが一番。

では何故やるの?

それは《覚えちまった》からです。
《覚えちまう》とやってみたくなるもんス。ついつい、、。そして無理をさせる。ナイフは物によってはちょっとやそっとじゃ根を上げない頑丈な物もあるから、ついついやっちまうのです。でもね、《覚えちまった》ことをやるならそれに合った物を使った方が絶対いいということです。一つの物で何でもやろうなんてのはアメリカちっくな合理的考え方かも。大工さんも庭師さんもちゃんと目的にあった道具を使いこなしております。まあ、それらが無い時の為に《覚えちまった》ことが役に立つのですが、、普段は要らんということですね。これあくまで私的な考えですので悪しからず。


一番上の写真でボロボロになっていたナイフもその度に研ぎ直されて私なりの癖がついたエッジに変化しつつあります。他のナイフもみんなそうでありやした。そしてそのナイフなりの安定した切れ味に落ち着くのです。メデタシメデタシ。くれぐれも無理は禁物。カロリーオフの糖質オフ。

ponioでした。
またのお越しを。







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