ENZO TRAPPER 95
Made in Finland
鋼材 N690Co
ENZO はフィンランドの刃物メーカーBRISAが設立したブランドです。
ブレード鋼材はN690Co。オーストリアBohler社のステンレス鋼です。
このTrapperには他にもO1スチールやD2、M2などの鋼材バージョンがある。鋼材による差は実際には使う人の感覚によるところが大きい。実は私は元々O1スチールのモデルをオーダーしていましたが向こうのミスでN690Coのモデルが送られてきました。N690Co?使ったことないね〜。
鋼材の組成は、、
C 1.07 Co 1.5 Cr 17 Mn 0.4 Mo 1.1 Ni- P - Si 0.4 S - W - V 0.1
ふむふむ、、なるほどなるほど、、
こんなん見てもピンときませワン!
O1スチールのモデルをオーダーしたのに間違って送られてきたこのN690Coモデル。海外の購入先と何度かやりとりをして、あれこれ考えた末に結局こちらの鋼材に変更。使えばわかるさ!的決断。
バーチ製ハンドルと鋼材の間には赤いライナー。天然素材のハンドルは割れる可能性あり。特にバトニングする時などはハンドル側は叩かないようにしないとね。
シーズは革製。シンプルで美しくタイト。
この可動式のベルトループがポイント。腰につけて椅子などに腰掛けた時に自在に動くので邪魔にはならない。抜く時、差し込む時にもウエストラインより下になるので楽チンさ。
自分はこのナイフで何をしたかったのか。
ブッシュクラフト?違うとは言い切れないけれどそこまで夢中ではないし、、サバイバル? なおのこと考えられない。じゃあ〜何?
落ち枝や流木を削り何かを作ったり少しの加工を加えて焚付けにしたり、キャンプではそのまま調理に使ったり、そんなことを考えた。でもそれならMORAやQueenのナイフだって同じことをやってきたのだし今さらこのナイフを買う意味はあるのか?とも自問した。
ただ一つ、ナイフという道具としての線の太さがそれらとは違うと感じている。私が使ってきたMORAのナイフは軽量で携行にもなんら負担にならず素晴らしく良く切れて扱い易い。ただ、その線の細さが時に不安に感じられることもあり(本当は十分なのだが)、Queen や ONTARIOなどのアメリカンナイフを使う機会も多かった。そこに ENZOのナイフが食い込んだのかな。
木材に対するタッチ《切れ味)は流石の北欧系。削り面が実に美しくツヤツヤしてる。
細かく見れば荒削りなところもあるけれどこうして見ると本当に美しいブレードだ。
N690Coはステンレス鋼の一種なので基本的には(錆びないわけではないが)炭素鋼よりも錆や腐食には強い。だから余計なコーティングもされていない。普段の生活や年に数度のキャンプでは光を反射したからって敵に見つかり狙撃されることもない、ない、絶対ない!それより良く切れて手入れがしやすく自分の気に入ったデザインや感覚的に合うものを選ぶことが大切だと思う。もちろん、そこに目的が加わればなおいいけれど。
箱出し新品ではスンバラスィ〜〜切れ味タッチ! カールしたフェザースティックでアフロヘアできるぜよ。ところが、、
ある日、ガチガチに締まった松の枝を割って焚付けを作っておりましたら、、
これぞまさしく《洗礼》じゃ〜!このナイフで初めてバトニングした後の写真です。マイクロかももクロかわからへんけどベベルと呼ばれるエッジの最先端部が潰れてる。それでええ!これを経て研ぎ直しては使い、それを繰り返して自分なりのエッジに育ててゆくのです。(エラそ〜〜に)
今は神経質過ぎないエッジに直してエエ〜具合の切れ味と刃持ちになっとります。
あちこち連れ出して、今年は正月キャンプでもこれ一本腰にぶら下げアレコレ使いました。そうなのだ!連れて歩きたいキレモノ、、私がENZOのナイフに求めたのはそこなのです。3本あるMORAのナイフはどれも素晴らしく良く切れる、軽くて安くて扱い易くて遠慮なく使ってきた、、前にアップした【タフなブレード】Queenのナイフも最初は酷かったけど今ではタフで気持ちの良い切れ味になった、、ONTARIOやESEEのナイフも同じ、、でもねキャンプや山ハイクに連れて歩きたいのはENZOなんです。
キャンプでもデイハイクでもナイフを使う機会なんてほんの僅かしかない、それはいつも感じることなんだけどね。必要もないのに小枝拾って削ったりクルクルカールしてみたり、、実際にはそれを使って道具を作り火を起こして、、なんてことは殆どない、これ私の場合。ブッシュクラフトだって必要に迫られてじゃなくナンチャッテ程度。況してや野山でサバイバルなんて普段の生活から考えれば意識してやったとしてもゴッコに過ぎない。街に暮らす私たちには地震や災害から生き延びるための備えとか、その後の生活を立て直す手立てを考えることこそ現実的なのだ。だから震災や災害から生き延びてこれからの生活を立て直している人たちこそサバイバルなのだと思う。若い頃にはバックパッキングで野宿なんて言うと『サバイバルですね〜』って言う人がいたけれどホンマに苦笑するしかなかった。人によってはナイフ見ただけでサバイバル言うから。
話をENZOのナイフに戻すと、、
このナイフもあと何年か使い続けなくちゃ出せない結論もある。三年先には真っ二つに折れてるかもしれないしね。ハンドル割れてまた瞬着で直してるかも。切れ味とかエッジの耐久性とか錆に強いとかはある程度わかった。あとはこれからどう《使える》かです。
先日から浜で切り出してきている流木を樹皮を剥いて1/4に割る。ENZOのナイフをバトンで叩くと2度目か3度目でパカン!と割れる。
エッジの先には既に割れ目が走っている。ブレードのシェイプと厚みがクサビの役割をしてくれるからだ。
この辺りから先はブレードの厚みが木を左右に押し広げながら割ってくれる。エッジは浮いた状態だ。ここで気持ちハンドルを握る手を捏ねてやるとバトンと同時に左右に割れてくれる。アックスと同じだね。
バトンの後で割った木をカールする。木質が柔らかくシュルシュルと削げる。
右は先述したQueenのナイフ。鋼材はD2、フラットグラインドで仕上げはミラーフィニッシュ、箱出しの状態では木も削れず紙もザオザオと裂けるほど切れなかった。それでもダイアモンドや天然砥石、セラミックシャープナーなどで研ぎながら4年使った。その後、コンベックス気味にブレードをシェイプしてからは極めて鋭い切れ味となった。素人仕事であるため完全なコンベックスグラインドには程遠いが見違えるほど《使える》ナイフに化けた。
ENZOのナイフは野山に行くなら連れていきたいキレモノです。使っても使わなくても連れて行きたいと思わせる、そんなオーラを放っています。でもそう言いながら
やっぱり MORA やん!いやいや IZULA やん!ってなる
のはドナイなってマンネン?
反省の半生、ponioでした。